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2011.11.12 第71夜~第80夜
第71夜
「僕の彼女」



みてくれも悪く、なにをやっても上手くいかない…
そんな僕にも、この前やっと初めての彼女ができた。
正直言って、僕なんかには勿体無いくらい美しい。
優しいし、細やかな気配りもできる人だ。
彼女は大学生だか僕は社会人なので、そういつも会えるわけではないが、毎週月曜日にはいつも僕の為に食事を作ってくれる。
しかし、何でもこなす器用な彼女だが、料理だけは苦手なようだ。
ここだけの話、いつも美味しいと言って食べてはいるが、正直まともに食えたものではない。
彼女よ、いくらなんでもペットフードを人間の食べ物の食材に使うのは無理があるぞ…

この前、彼女と夕方に近くの並木通りを散歩していた時、ふと彼女が、ちょっと困ったような顔で、「ねぇ、私幸せになれるかな…?」と呟いた。
「なれるさ、きっと僕がしてみせる」
そう僕は答えた。
その時の、夕日をバックに髪を風になびかせながら振り返る彼女の美しい姿は今もこの目に焼き付いている。

そんな幸せな日々も長くは続かなかった。
最近になって、彼女はため息をついたり、何か落ち着かない様子が多くなってきた。
僕は心配して彼女の相談にのってあげようとしたが、結局彼女は何も話してはくれなかった。
原因はすぐに分かった。
どうやら他の男と浮気しているらしい。相手は彼女の大学の先輩のようだ。
悲しみと怒りが一気に込み上げてきた。もう何もかもおしまいだ…
彼女を殺して僕も死のう…それしか、あの二人だけの楽しかった日々に帰る方法はない。

僕は包丁を持って彼女の家に行った。彼女がドアを開けた途端、僕は彼女に切りかかった。
彼女は泣きながら傷ついた腕を押さえ、部屋の奥へと逃げた。
初めは「許して…許して…」と言っていたが、覚悟を決めたのか、急に大人しくなった。
そして、恐怖に怯えた顔でこう言った。

「最後に…一つだけ教えて…」

僕はゆっくりと頷いた。

「…あ………な……」

彼女は震える声で、こう尋ねた。そして僕は全てを悟った。





「あなタハ…ダ…レ……?」