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台風一過のある晴れた日。

ある村のはずれに小さく深い穴が見つかった。
若者が「おーい でてこーい」と穴に向かって叫んだが、底からは何の反響もなかった。
彼は勢い良く小石を投げ込んだがやはり反響はなかった。

その穴はとてつもなく深いようで、学者が調べてもその深さは分からなかった。
困った学者が「穴を埋めてしまいなさい」といったところに利権屋が現れた。
利権屋は、仲間を使い都会で猛烈な運動を行った。
その結果、穴を原子炉のカスの廃棄場所とすることを官庁に認めさせたのだ。
原子力発電会社は争って契約した。
村人たちは心配したものの、数千年は絶対地上に害は出ない、と説明され、また利益の配分をもらうことで納得した。
まもなく都会から村まで立派な道路が作られた。

やがてその穴には原子炉のカスから、官庁の機密文書から、伝染病の実験に使われた動物の死骸から、あらゆるものが捨てられた。
穴はいっぱいになる気配を示さなかった。
穴は、捨てたいものは、なんでも引き受けてくれた。
穴は、都会の汚れを洗い流してくれ、海や空が以前に比べていくらか澄んできたように見えた。
その空をめざして新しいビルがつぎつぎと作られていった。
しかし、ある日建築中の高いビルの上で作業員がひと休みしていたところ、頭の上から「おーい でてこーい」と叫ぶ声を聞いた。

次に小さな石が彼をかすめて落ちていった…



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