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2011.11.26 懐古
「まもなく、一番線に快速××行きが――」
抑揚のないアナウンスがホームに響いている。おれはそれを聞き流しながら深い溜息をついた。
入社して一年、上司にいびられ、仕事に追われ、そんな毎日だった。

あの頃の青臭かったが、希望にあふれていた思いはどこへやらだ。
今ではすっかりうらぶれてしまった社会人だ。
ドアの開く甲高い音が聞こえた。いつの間にか到着していたらしい。
終電間際だというのに、車内は満席だった。


仕方なくドアの近くに陣取り重いカバンを抱えながら吊り革に掴まる。
そうこうしているうちにまた溜息が出た。
野球に人生をかけてもいいと思っていたあの時。地区予選に優勝し、甲子園出場が決まった瞬間。チームメイトと分かち合った感動。全て過去のことだった。
もう一度、溜息が出た。
「戻りてえなあ……」
思わず呟いていた。するとどこからともなく
「その願い、叶えましょう」
そんな声が聞こえた、かと思うと世界が回り、歪んだ。
何事かと思う間もなく今度は地面に叩きつけられた。


体中が痛い。そしてやけに眩しい。一体、何が起こったというのだ?
「おーい、何そんな所で寝てるんだ?」
遠くから声がする。かつて何度も聞いた声。
「筋トレ始まるぞー。早く来いよ」
この声は、間違いない。かつて俺とバッテリーを組んだ佐々木の声、だ。
立ち上がる。辺りを見渡す。さっきまで深夜の電車にいたはずだ。
だが今、おれは日光照りつけるグラウンドに立っている。
今行く、と叫んだ。涙声になっていたかもしれない。体の痛みなどもう無かった。
何が起こったかなど、どうでもいい。おれは帰ってきたのだ。あの輝いていた時代に。
それだけで充分だった。


「まもなく、一番線に快速××行きが――」
抑揚のないアナウンスがホームに響いている。おれはそれを聞き流しながら深い溜息をついた。
タイムスリップして一年、先輩にいびられ、練習に追われ、そんな毎日だった。
あの頃のうらぶれていたが、達観していた思いはどこへやらだ。今ではすっかり青臭い高校生だ。
ドアの開く甲高い音が聞こえた。いつの間にか到着していたらしい。
終電間際だというのに、車内は満席だった。

仕方なくドアの近くに陣取り重いカバンを抱えながら吊り革に掴まる。
そうこうしているうちにまた溜息が出た。
この会社に人生をかけてもいいと思っていたあの時。面接に合格し、内定が決まった瞬間。
家族と分かち合った感動。全て未来のことだった。
もう一度、溜息が出た。
「戻りてえなあ……」
思わず呟いていた。するとどこからともなく……




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