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2011.11.13
第55夜
「渓流釣り」
釣りが大好きだった友人はその日も朝から釣りに出かけていた。
場所は川の上流域で、かなりの山奥である。
ここから先は、友人の語り口調で書かせていただきます。
「車で行ったんだけど、途中からは獣道すらなくてな。仕方なく歩いたんだよ。かなりの悪路だったな。
崖も越えたし、途中クマが木をひっかいた痕もあったな。
で、やっと釣れそうなポイントにたどり着いてな。早速、そこらへんの石をひっくり返して川虫を集めたのよ」
俺「餌ぐらい買えばいいのに」
「いや、現地でとった餌は食いつきが違うんだよ。何よりとるのも楽しいしな。
虫を確保して、早速釣り始めたんだ。そしたら面白いぐらい釣れてな。
ものの3時間で十五、六匹は釣れたんだ。
流石に途絶えるだろうなって思ってたのよ。
けど爆釣モードは昼を過ぎても全く終わる気配がない。
生涯で最高の一時だったね。時がたつのも忘れて夢中になったよ。
気付いたら辺りは薄暗くてな。もう夕方になってたんだ。
身の危険を感じて、帰り支度を始めたんだよ。
ふと背後に気配を感じて振り返ったら、小さい女の子が背を向けて立ってる。
少し近づいて「こんなとこで何してんだい?」って聞いてみたんだよ。
振り向いた顔を見てギョッとしたね。
顔がお婆さんだったんだよ。しかも、顔がひきつるぐらい満面の笑顔だったんだ」
俺もギョッとした。
「でも病気か何かだと思って、同じ質問を繰り返したんだ。今度は丁寧語でな。
そしたら笑顔を崩さないまま、「いつまで」ってつぶやいたんだよ。何回も。
キチ〇イだったんかなあと思って、軽く会釈して帰ろうとしたんだ」
「そしたら、急に婆さんの声が合成音声みたいになって、「いつまで生きる?」って言ったんだよ。
背筋がゾクッとして、こいつはこの世の人間じゃないと思ってな。
凄い勢いで下山したんだよ。
途中、婆さんのつぶやく声が何度も聞こえた。
薄暗い山奥でだせ?発狂寸前だったよ。
あ~あ、最高のポイントだったのにもう行けねえなぁ…」
俺は自分の膝がガクガク震えているのを感じた。
話の途中から友人は気持ち悪いほど満面の笑顔だったのだ。
それからしばらくして友人は自殺した。
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釣りが大好きだった友人はその日も朝から釣りに出かけていた。
場所は川の上流域で、かなりの山奥である。
ここから先は、友人の語り口調で書かせていただきます。
「車で行ったんだけど、途中からは獣道すらなくてな。仕方なく歩いたんだよ。かなりの悪路だったな。
崖も越えたし、途中クマが木をひっかいた痕もあったな。
で、やっと釣れそうなポイントにたどり着いてな。早速、そこらへんの石をひっくり返して川虫を集めたのよ」
俺「餌ぐらい買えばいいのに」
「いや、現地でとった餌は食いつきが違うんだよ。何よりとるのも楽しいしな。
虫を確保して、早速釣り始めたんだ。そしたら面白いぐらい釣れてな。
ものの3時間で十五、六匹は釣れたんだ。
流石に途絶えるだろうなって思ってたのよ。
けど爆釣モードは昼を過ぎても全く終わる気配がない。
生涯で最高の一時だったね。時がたつのも忘れて夢中になったよ。
気付いたら辺りは薄暗くてな。もう夕方になってたんだ。
身の危険を感じて、帰り支度を始めたんだよ。
ふと背後に気配を感じて振り返ったら、小さい女の子が背を向けて立ってる。
少し近づいて「こんなとこで何してんだい?」って聞いてみたんだよ。
振り向いた顔を見てギョッとしたね。
顔がお婆さんだったんだよ。しかも、顔がひきつるぐらい満面の笑顔だったんだ」
俺もギョッとした。
「でも病気か何かだと思って、同じ質問を繰り返したんだ。今度は丁寧語でな。
そしたら笑顔を崩さないまま、「いつまで」ってつぶやいたんだよ。何回も。
キチ〇イだったんかなあと思って、軽く会釈して帰ろうとしたんだ」
「そしたら、急に婆さんの声が合成音声みたいになって、「いつまで生きる?」って言ったんだよ。
背筋がゾクッとして、こいつはこの世の人間じゃないと思ってな。
凄い勢いで下山したんだよ。
途中、婆さんのつぶやく声が何度も聞こえた。
薄暗い山奥でだせ?発狂寸前だったよ。
あ~あ、最高のポイントだったのにもう行けねえなぁ…」
俺は自分の膝がガクガク震えているのを感じた。
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