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2011.11.13 第56夜
「廃墟」


俺が小学生の頃の話。

俺が住んでいた町に廃墟があった。
2階建てのアパートみたいな建物で、壁がコンクリートでできていた。
ガラスがほとんど割れていて、壁も汚れてボロボロだったから、 地元の人間でも、あまりこの場所に近づくことはなかったらしい。
ある日俺は、友人と肝試しをすることになって、この廃墟に行くことにした。
まだ昼ぐらいだったから、建物の2階まで上がって建物を探索した。
そしたら並んでいる扉のひとつに、文字が書いてあるものがあった。
友人と近づいて確認してみると、扉の前に

「わたしは このさきの へやに いるよ」

と書いてあった。
俺と友人は扉を開けて中に入り、先に進むことにした。
歩いて行くと分かれ道に突き当たって 、壁に

「わたしは ひだり に いるよ」

と書いてあった。
少し怖くなったけれど、俺と友人はそのまま左に進むことにした。
すると両側に部屋があるところに突き当たって、壁に

「あたまは ひだり からだは みぎ」

と書いてあった。
友人はこれを見た瞬間に、半狂乱になって逃げだした。
でも俺はその場所にとどまって、勇気を出して右の部屋に行くことにした。
部屋に入り進んでいくと、突き当たりの壁に

「わたしの からだは このしたにいるよ」

と書いてあった。下を見ると

「ひだりの へやから わたしの あたまが きてるよ うしろ みないでね」

俺は急いで、その部屋の窓から飛び降りて逃げた。
それからはもう、その場所には近づいていない。




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