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2011.11.12 第31夜~第41夜
第31夜
「彼女に言えていないこと」



大学時代の友人から、「うちに遊びに来ない?」と電話が入った。
声を聞くのは半年振り、実際に会うとなれば1年ぶりにもなるのだなあと、仕事明けのぼんやりした頭で話半分に聞いていたらいつの間にか、 2週間後の週末を彼女の家で過ごすということになっていた。

当日は急な仕事が入ってしまい、夜、仕事が終わるとそのまま彼女の家へ向かった。
着いてすぐに手料理を振舞われ、彼女の仕事の愚痴を聞き、土産にと持って行った 酒やつまみを空けきるころには日付を越えてしまっていた。

それではもう寝よう、と気分良く横になりまぶたを閉じたのだが、落ち着かない様子で寝返りを打つ彼女が気になってうまく眠れない。
どうしたのかと聞けば、実は言っていない事があるの、と気まずげな様子で彼女が言う。

「2週間前からなんだけどね。手首がでるのよ」

よくわからない、と首を傾げると、彼女は少し離れた位置の ベットの真正面いちにあるクローゼットを指差した。

「一番初めは、クローゼットの隙間から指が出ていたの。そのときはただの見間違いだろうと思って、気にしなかったのよね」

でも次の日、今度は本棚の影に指をみつけて、また次の日はテーブルの横に手がみえた、と彼女は言った。

言われた通りの順に目線を動かして行けば、その"手"は明らかにベットを目指して移動している。
実際に見たわけでも無いのに、背筋がぞわぞわした。

それでね、と強張った顔で彼女が言う。
「それでね。昨日ついに、ベットの縁に手首があったのよ」
だからもしかしたら、今日、何か起こるかもしれない、と力なく続けられた言葉に色々と思うところが無いではないけれど、結局何も言えなくなってしまった。

そのまましばらく、私が無言でいると彼女は急に笑い出して、嘘よ、と言った。
「誰か泊まりに来たときに、驚かそうと思って考えた話なの」
怖かった?と笑う彼女はとても楽しそうだったので、私は少し困ってしまった。

実は私も、さきほどから彼女に言えていないことがあったのだ。
手の話を彼女が始めたとき、彼女の背後をとるように 座り込んでいた男が徐々に前へと傾ぎ始め、話が終わる頃には彼女に覆いかぶさり、 それからずっと、笑う彼女の顔を凝視しつづけているのだけれど、 果たしてそれを告げるべきなのか、どうか。

私はゆっくりと布団の中へもぐりこみ、何も見えないよう固くまぶたを閉ざした。
いつの間にか外では、雨が降り出していた。
第32夜
「バキボキッ」



ある寒い冬の夜、仕事が遅くなってしまった男が急いで家に帰ろうと車をとばしていた。
と、そこへバイクに2人乗りした学生が急にとびたしてきて事故に会ってしまった。
男は幸い無傷であったがバイクに乗っていた2人の学生は全く動く気配がない。
男は急いで様子を見に行った。
すると、運転手の方の学生の頭が180度逆方向を向いていた。
男は何を思ったのか学生の頭を元に戻そうとひねりだした。
『バキッボキッ』という音とともに学生の頭がさっきとは逆向きになった。
すると、バイクの後ろ側に乗っていた学生が気絶から目を覚まし運転していた友達を見るたび叫びだした。
『おぃ!ゆうた!おい!!何が起きたんだよ!目を覚ませよ!!!』
男がそれを聞いて説明をした。
『……というわけで助からないとは思ったが応急処置で頭を戻したんだ。すまなかったな。でも頭が逆のままよりはましだと思ったんだ』
それを知った学生がパニックになり涙目でこういった。

『何してくれんだよじじぃ!ゆうたは…ゆうたは風避けのためにジャンパーを逆向きに着てたんだ!この人殺しがぁ!!!!!!!!!』

そぅ…学生は死んでいたわけではなかった…ただ気絶をしていただけだった。
学生 上岡ゆうた 死亡時刻12時56分

死因……頭をひねられ首を複雑骨折及び呼吸困難
助かっていても植物人間だったと医者は言う。



第33夜
「ひどい男の女」



前の勤務先の同僚が俺の職場に立ち寄った。
お互いに既婚者だが俺らはよく飲みに行ったり遊んだ仲だった。
久しぶりに合ったので近所の茶店に行った。

「最近どーよ、悪いことしてる?」

すると彼は笑いながら始めた話はこうだ。

一年程前から10歳下の愛人がいてクリスマスは22・23・24・25日と彼女のマンションで一緒に過ごした。

当然自宅に帰らず家庭はメチャクチャ。
しかし、小学生の娘がいるので可愛そうに思い25日の19時頃家に帰ることにした。
それを止めようと泣き叫び懇願する女。

最後は喧嘩となり、ようやく女を振り切り11階からエレベーターに乗った。

そして笑いながら更に話を続けた。


「マンションのエントランス出て、外に行ったらそいつ居たよ」


【解説】
エレベーターよりも早く下に人間が一階に降りる方法が一つだけあります…



第34夜
旅館の老婆



ある4人家族がとある地方の旅館に宿泊。
深夜に娘か母親がトイレで惨殺されているのが発見された。

全身を刃物で滅多刺しにされ、顔面は誰だか判別がつかなくなる程斬り付けられていた。
死体には舌がなかった。トイレには格子のついた幅30cm、高さ10cm程の窓と小さな通風孔があったが、とても人の入れる大きさではない。
カギもかけられていた。誰がどこから侵入してきたのか…

警察はその旅館を経営している夫婦、その息子、近辺の変質者などを聴取したが、現場が密室だったこともあり、迷宮入りになるかと思われたが、ある日、旅館経営者夫婦に付き添われたその息子が署に出頭。

「近所の目もあり、なかなか正直に話すことができなかったが、とんでもないことになったので、お話します」

「息子は盗撮が趣味で再三注意していましたが、事件当夜もビデオカメラで天井裏から個室を撮影していていたのです。撮影していると格子のはまっている小窓のガラスが開き、ガラスの破片を持った小さな…いや、このビデオテープに一部始終がはいっていますので…」

息子はビデオテープについて訪ねられると、恐怖が蘇ったのか半狂乱に。
精神に異常をきたすほどの何かがこのテープに入っているのかと思い、捜査員達もテープを再生するのを恐れた。

そのテープには排尿する女性を俯瞰で撮影した映像が収っていた。
和式便器にしゃがんでいた女性が立ち上がろうとしたその時

小窓からガラスの破片らしきものを握った小さな、15~20cm程の老婆が音もなく飛び込んできた。女性は悲鳴をあげる間もなく咽を掻き斬られ、そして顔中を、体中を斬り付けられ…

女性が息絶えると、小さな老婆は死体から舌と頭皮の一部を切り取り、天井を見上げ、

「次はおまえだよ」

と言って小窓から出て行った…
舌と、髪の毛のついた頭皮とを持って…

捜査員の中には、嘔吐するもの、泣き出すもの、恐怖の余り失禁する者もいたという。
結局事件は未解決のままだが、警視庁に、件のビデオテープが今なお保管されていると言う。





第35夜
手形だらけの窓



トンネルの中に居るのに、雨が車の天井を叩く音がして、そんなわけはない、って気づいて外にでてみたら天井が手形だらけだったー…という話し。

よく出来た話だなーってオカルト好きの友人と盛り上がり、地元でよく出ると有名な通りのほとんどないトンネルに男2人で検証ドライブに行くことにした。

で、雨の日を見計らって車で例のトンネルに入ったんだけど
…そしたら本当にするんだよ、バタバタ車体がを叩く音が。

もう、外に出て確認するまでもなく、前後左右の窓からボンネット、サイドミラーにまで子供の手くらいの小さな手形がべたべたと重ねられていた。
2人の目の前で。

怖くなった自分たちは制限速度も無視してそのままトンネルを突っ切って大雨の中を遠回りで自分たちの街に帰るはめになった。

その間、フロントガラス一面にはくっきりと、視界を遮り続けた無数の手形が怖くて不快で忘れられない。

後日、その日はそのまま別れた友人に例の手形について聞いてみたら

「いや・・・拭いたらものすごく簡単に落ちたんだけどね。本当に簡単に…」

って言ったきり青い顔をして黙ってしまった。
彼にとっても早く忘れたい過去なんだな、とその後はお互い話題にあげないようにしている。




【解説】
当日は大雨にも関わらず、くっきりと手形は残っていた。
つまり手形は外からついていたのではなく、内側からついていた。



第36夜
僕の彼女



僕の家の隣に女の子が越してきたのは小四の夏休みだった。
彼女の家庭にはお父さんがいなかった。
お母さんは僕の目から見てもとても若かったのを覚えている。
違うクラスになったけど僕と彼女は仲良くなった。
彼女はあまり明るいほうではなく、女子の友達も少なかった。
本ばかり読んで親しい友人のいなかった僕と彼女はお互いの家に遊びに行くほど仲良くなった。
そのうち彼女は愚痴を言うようになった。
母親がすぐ殴ること。
同じクラスの女子が意地悪をすること。
すきな男の子ができたけどその子はほかの女子にも人気があること。
最初は僕のほうがよくしゃべっていたけれど、この頃からは一方的に彼女が話し僕が聴くようになっていた。

ある日を境に彼女は学校に来なくなった。
好きだった男子の取り巻きたちにいじめられていたのが理由だ。
彼女は僕に会うたびに自分をいじめた女子が憎いといった。
そのいじめを見てみぬ振りしていたクラスの皆も憎いといった。
そして現実味のない復讐やクラスメイトの悪口を延々と話し続けた。
僕はただ黙って相槌を打っていた。

中学に入ってから彼女の素行が荒れ始めた。
夜遅くまで帰ってこないようになり、これ見よがしにタバコをすい始めた。
家庭環境も悪化し、深夜にいきなり親子喧嘩が始まったりもした。
一度は警察が彼女を迎えにやってきた。この頃から近所と折り合いが悪くなり、 中傷ビラや落書きなどの悪質な嫌らせが彼女の家に行われた。
一度は郵便受けに刻んだ猫が入っていた。
僕も母に彼女と付き合うのをやめるよう言われた。

僕が高校を出たとき、彼女は部屋に引きこもるようになった。
僕も彼女の姿を見ることがめっきり減った。
めっきりふけこんだ彼女のお母さんに話を聞くと昼は絶対に出てこない。
ご飯は部屋の前においていく。
深夜になるとトイレに行くときだけ出てくる。
そんな生活を送っているようだ。
僕は久しぶりに彼女に会いにいった。

彼女は僕に会うのを拒絶した。
扉越しに帰れと怒鳴った。
何を話しても黙っていた。
一度なんかはドアがあいたと思ったら味噌汁をかけられた。
ちらりと見えた彼女はげっそりと青白くやつれていた。
絞った雑巾のようだった。
僕は毎日彼女に会いに行った。
親とけんかした。
やっとできた友達と疎遠になった。
それでも毎日彼女の部屋まで会いに行った。

そのうち彼女は扉越しに話をするようになった。
悪い仲間と付き合っていたこと
万引きが癖になって警察に捕まったこと
恋人ができたと思ったら避妊に失敗して子供ができたとたんに逃げられたこと
助けてほしくて相談した母親に半狂乱になって殴られたこと
子供をおろしたこと
死のうと思ったこと
手首を切ったこと
昔と同じ様に彼女が一方的にしゃべり続け、僕は相槌を打つ。
意見を求められたときはなるべく無難な意見を言う。

そのうち彼女は部屋を出た。アルバイトも始めた。
だんだん性格も明るくなり始めた。彼女のお母さんから泣きながらお礼を言われた。
ある日、彼女は近所の団地から飛び降りた。
下が植え込みだったこととたいした高さじゃなかったために一命は取り留めたが 脊髄が傷ついたために今後の人生は車椅子のお世話になるそうだ。
ベッドに横になった彼女はなきながら謝った。
親や僕に迷惑をかけていたのがすごく申し訳なかったから飛び降りたんだそうだ。
泣いている彼女を慰めた。寝転んだまま泣いている人を慰めるのは難しいと思った。
慰めながら彼女にプロポーズした。結婚を前提に付き合ってくれるように頼んだ。
彼女は全身の水分を絞りつくすようにして泣きながら「本気?私でいいの?本当にいいの?」
と何度も聞き返した。訊かれる度にうなづき返した。
君のことがずっと好きだった。
顔をゆがめてクラスメイトの悪口を言っていたときも
悪い友達と付き合って荒れていたときも
一方的に愚痴をしゃべり続けていたときも
君が泣きながらお母さんが自分を殴ることを告白したときも
引きこもって別人のようにやせたときも
小学生の頃に君が好きな男子の名前をその取り巻きたちに教えたときも
君の家のポストに入れる猫を刻んでいたときも
足の感覚を失い白いベッドに飲み込まれそうに小さく横たわっている今も
ずっと君が好きだ。
これで完璧に君は僕だけの「彼女」だ。

僕たち今度結婚します。



第37夜
走る男



走る男
そうタイトルだけ記された、何とも斬新?なパッケージのビデオ。
「しょうがない、どうせ百円だし暇つぶしになればそれでいいか」
Aは自宅に帰ると早速ビデオを再生した。
タイトルも出ずに、いきなりホームレスのようなボロボロの服を着た 痩せ型の男が走っている映像が映し出された。
「?…手に何か持っている…鋸だ。何で鋸なんか持っているんだ?」
それにしてもこの男、こんな全力疾走しているのにバテるどころか 汗一つかかず、スピードを落とす気配さえ一向に見せない。
「ん…? そう言えばさっきからこの男、見たことあるような道を走ってないか?」
Aは段々と胸騒ぎがし始めた。…嫌な予感がする。
「あれ? この道は…? この角を曲がったら…?」
次のカットで胸騒ぎは確信になった。
ああ、ヤッパリだ。この男は家に向かってきている。
しかし、気付いたときには男は家のすぐ前まで着いていた。
いつの間にか、カメラは男の視点になっていた。
画面は古いアパートのAが住んでいる二階部分を映している。
急いでベランダから外を覗くと…いる。あの男が。
男は迷わずベランダの柱を鋸で切り始めた。
訳の分からないAはとりあえず、
「おい! なにすんだよ! やめろよ!」
と男に怒鳴った。
すると男はAを見上げた。
Aは思わず息をのんだ。
画面からは確認できなかったが、男は両目がロンパッてカメレオンのようだ。
そしてボロボロの歯をむき出しにしてニヤッと笑い、 走って視界から消えたかと思うと、階段を駆け上がる音が聞こえる。
「ヤバい! ここに来る!」
鍵を閉めようと玄関に急ぐが、男はもうそこに立っていた。
居間まで追いつめられ、鋸を振りかざす男。
Aはとっさにリモコンで停止ボタンを押した。
その瞬間、男は居なくなっていた。鋸もない。
Aはすぐにビデオからテープを引っ張り出してゴミ箱に捨てた。
Aの部屋のベランダの柱には、深々と鋸の痕が残っていた。


第38夜
「隣の知人」



ある女子大生の話。
その女性はマンションに一人暮らししているが、ある夜寝てたら妙な胸騒ぎがした。

気になって起きてみると、玄関の外に違和感を感じる。
別に特別霊感があるわけじゃないけどなにか気になる…。

恐る恐るドアについてる覗き穴を見てみると……

特に変わったことは無い。

ただ隣室の顔見知りのおじさんが横切ってびっくりしたが軽く会釈してくれた。

近くのコンビニにでも行ってたんだろう。
安心してその女性は寝ることにした。


結局一晩中眠れなかったが…



【解説】
隣人はなぜ会釈できたのか…?



第39夜
「ホテルにて」



出張で泊まるホテルは同僚が出るぞーって散々脅していたところだ。
自分はその夜、怖がりながらもベッドに入った。

案の定深夜にドアをノックする音がする。
ホテルの人かな?と思い声をかけたが返事がない。
もうドアを見るのも怖くてひたすらノックの音がする中夜が明けた。
ノックが止んだ後、すぐチェックアウトした。

出張から帰って同僚にノックの話をすると
「やっぱり出たか」とこんな話をしてくれた。

そのホテルは以前火事になり逃げ遅れた人がいたという。
その人は運悪く部屋の中に閉じこめられて、そのまま亡くなったそうだ。

ああよかった、ドアを開けていたら今頃どうなっていたことか。
すると同僚が

「え?幽霊は外に出たがってたんだろ?」



第40夜
「レストランにて」



この前、友達がウェイターやってるレストランに、一人で晩飯食いに行ったんだ。
ウェイトレスに案内されてテーブル席に着くと、俺の前と向かいの席にメニューを置いて行った。

何だ?と思っているうちに友達が水と紙おしぼりを持って来た。
そして「おい、珍しいな」なんてニヤつきながら、向かいの席にも水とおしぼりを置いてくる。

いい加減薄気味悪く感じながらも注文すると、
「で、お連れさんは何にする?」と聞くものだから、いや、一人だよと反論。

すると友達は怪訝な顔で「あれ、店に来た時、女連れじゃなかったか?」などと小声で言う。
「髪の長い、白いワンピースの女を連れて入ってくるのを見た」と。
「今はいないのでトイレにでも行ってるんだろうけど、てっきり彼女なんだろうと思った」と。

もちろん俺に心当たりはないから否定したら、逆に向こうが気味悪いものを見るような目でこちらを見る始末。
とうとう何だか寒気がしてきた。

…と、
不意に友達は吹き出すと
「いや、わりーわりー」

と謝り始めた。

「今日は客も少なくて暇してるところにお前が来たもんだから。
ほら、よくあんじゃん?誰もいないはずの席にコップを置く店員、て怪談。
あれをやって、お前ビビらせて遊ぼうかと、水持って行く時に急に思いついてさ」

そして
「本当スマン。こんな事して遊んでたのバレると店長にどやされるから、黙っといてくれよ」と、食後のコーヒーをサービスしてくれた。



【解説】
友達のウェイターは確かにイタズラとしてやっていた…
では最初のウェイトレスは…?
Secret

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